谷川岳、一ノ倉岳 1977m 

  谷川岳は自宅から近い山スキーの好適地である。特に谷川岳の先の一ノ倉岳からの芝倉沢は広くて長いやや急斜面が続き、周りの光景も2000m以下の標高とは思えない雄大さで素晴らしい。

  これまで10回以上行っている一ノ倉岳から芝倉沢の滑降だが、歳を取ってきて体力的にきつくなってきているので今年が最後になるだろうと考えて、好天が期待された3月7日に行くことにした。

  今年は新型コロナウイルスの蔓延で、谷川岳天神平スキー場は平日は営業を中止している。土日は営業をやっているが開始時間が遅い中で、3月6,7日だけは7時から営業開始であった。早く出発すれば、ゆっくりペースでも余裕を持ってこのルートをこなせる。

  問題は前の週に暖かい日が続いていたので雪崩が発生して下部の谷筋はデブリが出ていていることと、前日まで気温が上がり当日は気温が下がる気象情報だったので、上部の急斜面はクラスとしていて固く滑落する危険性があることであった。最近は降雪が全く無いので、パウダースノーの滑りは期待できない。その代わり、雪崩の恐れは無い。

  これまでの経験で、上部の固い斜面は慎重に左側に斜滑降をしてして広い谷筋の中央部から左側の雪が吹き溜まって柔らかくなる所まで行き、そこでターンして滑り降りれば良いし、デブリの部分はスキーを担いで歩いて下れば良いだろう。いざとなれば谷川岳から引き返せば良い

  朝7時開業で早いので、谷川岳ロープウェーの駐車場の近くで、以前も泊まったことのある天神ロッジに前夜宿泊して行くことにした。天神ロッジは芝倉沢から降りた湯桧曽川沿いの県道のすぐ近くにあるので都合が良い。

  3月 7日(日) 晴、無風
  単独
登行高度:770 m、 滑降高度:1230 m  

天神平ロープウェー終点(7:30)-熊穴沢避難小屋(8:30)-谷川岳、トマノ耳(10:10)−谷川岳、オキノ耳(10:30)ー一ノ倉岳手前鞍部(11:15〜11:30)―一ノ倉岳(12:10〜12:45)−滑落事故現場(12:50〜13:10)−デブリ帯通過(13:40〜14:05)―紅芝寮(14:25)−マチガ沢沿い登り(14:45〜15:10)―県道土合橋手前(15:45)

  朝5時過ぎに起き出して、簡単な朝食を取り、山スキーの準備をして6時過ぎにkるまで宿を出た。6時半頃に谷川岳ロープウェーの駐車場ビルに到着。すでに大勢の登山者、山スキーヤー、山ボーダーがいた。山スキーの準備をしてロープウェーの切符売り場に並んだがすでに50人近くが並んでいた。やはり登山者が多い。

  7時少し前にロープウェーは動き出した。片道切符を買い、登山届を出してロープウェーに乗った。2人連れの山スキーヤーが同乗していて少し話をしたが、結局この2人連れと前後して一ノ倉岳に上がり芝倉沢を下ることになった。

  天神平に着いて見ると、すでに天神峠のリフトが動いていた。少しでも体力温存のため迷わずスキーを装着してリフト代400円を払いリフトに乗った。リフトを降り尾根筋を滑り谷川岳方面に向かった。

  滑り降りて登りになる手前で、スキーをザックに付けて、スキー靴にアイゼンを装着して歩きだした。最近降雪が無く気温が下がっているので雪が締っており歩きやすい。おまけに大勢の登山者の踏み跡がしっかり着いている。結局この日は持参したシールは一度も使うことは無かった。


尾根筋を進む                    雪に覆われた熊穴沢避難小屋           これから上がる谷川岳

  


  途中で 熊穴沢の避難小屋は完全に埋もれており、煙突だけが少し出ていただけであった。これから後は谷川岳頂上までゆっくりペースで歩いて上がり、次々と後続の登山者、山スキーヤーに追い越されたが、逆に追い越した人は1人もいなかった。

  天狗の踊り場では休んでいたグループを追い越して進んだが、後では彼らにも追い越されたようだ。


尾根筋を上がる                   大勢の登山者、山スキーヤーが行く        肩の小屋
  

  
  結局一度も休まずにゆっくりペースで歩き続けて、谷川岳山頂のトマの耳に到着。3時間かかっていないので、まあまあのペースであった。


トマの耳頂上                   トマの耳より見る赤城山                オジカ沢の頭。右遠方に苗場山
  
 


  トマの耳には大勢の登山者がいたので、頂上からの写真だけを撮って、次のオキの耳に向かった。こちらも大勢の登山者がいて写真だけを撮って一ノ倉だ
けに向かう稜線沿いを進んだ。

オキの耳                        茂倉岳と一ノ倉岳                 オキの耳の標識
  


  鳥居がある所までは登山者が大勢いたが、その先は人が減った。先行の山スキーヤーのトレースについて稜線沿いを進んだ。途中で戻ってくる2,3の登山者以外は誰にも合わなかったが、正面の一ノ倉岳を上がっている山スキーヤーや山ボーダーが何人か見えた。


オキの耳より見るトマの耳              稜線上を一ノ倉岳を目指して進む        谷川岳方面を振り返る
  


  やっとの事で、一ノ倉岳手前の鞍部に到着。疲れたのでここで大休止を取り、行動食を食べ水を飲んだ。休んでいる間に2人連れがやって来た。今朝ロープウェーで同乗した人達であった。

  休んだ後は最後の登り。やはり疲れる。2人連れには先に行ってもらいゆっくりペースで上がった。ようやく一ノ倉岳まで上がり、芝倉沢エントリーポイントになる鞍部で昼食を取りながら大休止。


茂倉岳との鞍部で休憩。手前が芝倉沢最上部   万太郎山。右後ろは仙の倉山          武能岳、朝日岳
  


   2人連れも近くで安うでいた。その後も、次々と山スキーヤー、ボーダーがやって来た。本日、柴倉沢を滑り降りた人は先行の人も含め全部で20人以上いたと思われる。

  隣で休んでいた先行の単独行の人が滑り降りていった。雪面は固いようでターンするとガリガリと音がしてトレースが残らない。彼も柴倉沢についてよく知っているようで、左側に斜滑降して行き、雪が吹き溜まっていて柔らかくなっている所をターンしながら降りたようである。

  長い休憩の後は準備をしてスキー滑降開始、予想通り雪は固い。慎重に左側に斜滑降をして谷筋の中央部の雪が吹き溜まって柔らかい所に出て、立ち止まりほっと一息を付いた。雪が吹き溜まっていると言っても、固い雪の上に10cm程度の柔らかい雪が乗っている程度である。

広い芝倉沢源頭部を滑る
  


  それでも、ターンすると雪が滑り落ちることも無い。この滑りやすい雪が続いていたのでショートターンを繰り返しながら滑り降りては立ち止まって周囲を眺めた。この雄大な景色も見納めかも知れない。 

  先ほどの2人連れも下りてきた。ところが。隣のやや固い雪面を滑り降りてくるグループがあった。見ていると、転倒滑落して落ちてくる人がいて傾斜が緩くなり雪が柔らかくなったところで停まった。その人は幸いけがが無かったようであった。ところがもう1人が転倒滑落したようで、ものすごい早さで転げ落ちて停まった。この方は足を怪我をしたようで動けない。そのグループの全員が集まってきたが、どうしようも無い。

  こういう場合は警察に電話をして救助要請をしヘリで運んでもらう以外無い。ところが携帯が通じない。先ほどの2人連れがグループのリーダーから怪我をした人やグループ名、リーダー名を聞いてスマホに入力していた。慈雨分でも力になれることがあればお手伝いしようかとしばらく待ったが、何も力になれそうも無いと分かったので下り始めた。


芝倉沢中間部を滑る

   


  下るにつれて斜度は緩くなり、雪も柔らかくなって周りの景色を楽しみながら滑り降りた。
 

朝日岳を正面に見ながら滑り降りる                       滑ってきた斜面を振り返る
  


 下っていくと、谷筋は一面のデブリに覆われていてスキーなどは出来ない。先補のの2人連れも救助要請に必要なことを伺って下りてきた。デブリ帯をスキーを外して担いで下りてデブリが無くなった緩斜面おなった。谷筋であるが幸い携帯が通じそうで、、2人連れの方が警察に電話して救助要請をした。


下部の谷筋はデブリで一杯。スキーを担いで歩いて下る。
  


  自分も救助要請をお願いしたことがあるが、いろいろのことを聞かれていた。只救助をお願いしますとかヘリの出動をお願いしますでは駄目で詳しい情報が必要と改めて知った。

  その後、2人連れは湯桧曽川沿いを先に進んだ。マチガ沢出合でいつものように渡ることが出来ず戻ってきた。トレースについてスキーを外して上に上がってから、そのまま湯桧曽川沿いを進んでいった。


ブリ帯を通過した緩斜面で一休み         湯桧曽川沿いを行く                  紅芝寮を横に見て進む
  


  自分はさらに県道沿いをまで上がろうかと上がりかけたが、雪がグサグサで潜る。やはりトレース沿いに下った方は良いかと思い直してマチガ沢を越えてトレース沿いに戻った。

  後はトレースに従って下り土合橋沿いの県道に出た。先ほどの2人連れの他数名がいて警察関係者らしい人に話をしていた。彼らはスキーを担いでロープウェー駐車場に戻っていった。

  自分は向かいの天神ロッジに行ってスキー靴を置いてあったトレッキングシューズに履き替えてスキーや荷物を置いて駐車場まで車を回収しに行こうとしていると宿の方が、駐車場まで送ってあげようとの有り難い申し出。駐車場ビルまで送ってもらい車を回収して後片付けをして帰途に着いた。途中で宿に置いてあった荷物やスキーを車に積んで、暗くなる前に自宅に着くことが出来た。

  芝倉沢はやはり素晴らしい山スキーサイトである。芝倉沢で同行頂いたり、お目にかかったりした今は山スキーをされなくなったKさん、雪崩で亡くなったKさんんとSさん、そしてYさんを懐かしく思い返した。

  最後に事故に合われた方が軽症ですぐに回復されることを願っている。

GPSトラック(登りが赤、下りが青、登りの前半は電池切れに気付かずトラックが無い)